なんとなく書を持って町へ出よう。

社会人大学院生(教育学専攻)による読書記録

粟飯原匡伸(2019)「分科会B 高等学校の地域連携・協働について」『第5回SGH研究大会 第22回総合学科研究大会資料集』

 文部科学省がスーパーグローバルハイスクール(SGH)として指定する筑波大学付属坂戸高等学校の研究発表会に参加した。自分は課外活動に関心があるため、地域と学習の役割について討議する分科会Bを選択した。なかでも、以下、報告書と大会参加で見聞きしたことから学習したことをまとめる。

 本報告書は、中央教育審議会(2016)「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協議の在り方と今後の推進方策について(答申)」と文部科学省(2019)「地域学校協働推進授業報告書」は、高校生が「地域の活動に積極的に加わり、地域課題の解決に取り組む」ことは彼ら自身の学習の動機づけにつながると同時に、地方創生に貢献するとして積極的な推進が図られていること前提として示した。一方、その実現には、外部人材と目的や内容についての連携が不十分なため、充実した教育活動になっていない現状があり、高校生が行政の都合で「地域創生」の中心とされていることを問題視している。

 そこで、本分科会では、問題の所在を新学習指導要領で刷新された「総合的な探究の時間」において、実社会や日生活の事象や現代社会の課題が探究対象とされているため地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用することが期待されているという高校生の学習から見た地域とのつながりという観点から議論が展開された。文部科学省は、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の枠組みの積極的活用や小・中学校の地域学校協働本部との連携を図ることなどにより地域社会と共にある学校を実現することを期待していることから、まず最初に、分科会開催高校ではどのような体制がとられているかについての説明がなされた。

 外部連携のための留意点としては、まず、校長や副校長、教頭、総合的な探究の時間コーディネータ等の担当者が中心となり、外部人材等と連絡・調整の機会を設定すると同時に、教員が個別の外部教育資源の有効な活用を図る姿勢をもつことが重要である。また、校内に外部連携を効率的・継続的に行うための仕組みをつくることも考えられる。本分科会で示された配慮事項をまとめると以下のようになる。

1)日常的な関わり

2)担当者や組織の設置

3)教育資源のリスト

4)適切な打ち合わせの実施

5)学習成果の発信

 1)は、大学や商工会議所、非営利団体等から社会人講師を招くなど学校から外部にかかわる姿勢をもち、信頼関係を通じて協力体制を築くことがあげられた。

 2)については、校務分掌に地域連携部をつくり、地域との連絡協議会などの組織を設置し、地域の有識者/代表者と協議する場所と時間を設定している。

 3)教育資源に関しては、小・中学校の地域学校協働がk津堂の枠組みを活用し、地域学校協働活動推進員の協力を得て、調整を依頼することもできる。

 4)外部人材が詳細に教えすぎないよう、授業のねらいを明らかにし、どのような資質能力を育成するのかについての考えを共有する必要がある。

 5)はアカウンタビリティにあたる。学校公開日や学校祭などの開催など積極的な情報の発信をして地域の理解をあおぐ

 実際には、当該校の「総合的な探究の時間」の地域学習の歴史は長く、市町村、小中学校、社会教育機関、大学、産業界、地域NPOと幅広い連携体制がすでに十分に敷かれていた。特に、専門学科を設置している総合高等学校であることから、農業や福祉など学習内容が地域のニーズに自ずと対応しており、連携は外部から申し込まれることが多く、生徒の希望で学校の側から接近したいときには社会連絡協議会に相談をするという体制をとり、教員がことさら動かなければならない段階は過ぎているようだった。

 分科会では、参加者の領域に応じて6班をつくり、グループディスカッションがおこなわれた。自分は「継続ボランティアと地域」を選択した。

 「継続ボランティア」は、2014年に市の社会福祉協議会と高校生のためのボランティアプログラムを共同で開発するボランティアセンターが中核となって運営されている。生徒は部活動とは別に自分の興味関心で旧来から行われている活動に参加したり、プロジェクトを立ち上げたりする。活動の例としては、下呂山町桂木ゆず収穫ボランティア、第二鶴ヶ島ゆめの園交流会ボランティア、子ども食堂ひこうき雲」、埼玉県障碍者スポーツ大会などがある。報告書からは「年齢を超えたひととひととのつながりの大切さを感じているようである」「同質性の高いコミュニティにいる高校生が、多様な他者が地域に存在することを理解し、グローカルな視点で主体的に活動できるきっかけとなっている」とその教育効果が報告されている。

 話し合いには、高等学校でボランティア部の担当をされている先生方が参加された。地域との連携構築については全体説明がなされていたので、話し合いの内容は「地域ボランティアの経験をいかに生徒の学びにつなげるか」という実施スキームに焦点がしぼられ、各校の先生の活動実践と課題が共有された。

 自分が話し合いに参加して考えたのは以下3点である。

 まず、継続ボランティアの実施にあたっては、総じて教育目標をかんがえておこなう視点がなかったことである。いかなる教育活動も教育目標があり、それに準じた評価(何が学べたのか/身についたのか)がなされなければならないと考えるが、それに関する質問をしたところ「目標は地域に愛される学校づくり」であり、「特別な評価基準があるわけではなく、通知書に積極的な参加があったと記載する」という話があった。ボランティアなど生徒が主体となる活動は、リーダーシップや国際性の涵養など非認知スキルを身につけるために行なわれていると考える。「積極的な参加があった」というのは、何も表していないのではないだろうか。参加者のなかからは、一回だけおこなった校外のごみ拾いに関しても「積極的な活動をおこなった」という記述をすることもあるという事例が示された。

 次に、継続ボランティアの振りかえり(リフレクション)に不十分さが見られたことである。学校行事ではなく個人の参加であることもあり、体験することのみをよしと考える傾向があるようである。ポートフォリオ評価についての理解もまだ浸透しておらず、それを利用した形成的評価についても知識のない先生が少なからずいることが考えられる。また、リフレクションをおこなっている学校でも、毎回書いていれば自ずと深い学びになるはずであるという希望的観測にもとづいておこなわれていた。近年はフィードバックなど経験学習の方略も充実してきているだけに残念に思われた。リフレクションに関するよい要素としては、先輩からの引継ぎノートがあった。活動内容の改善から見方考え方まで記録されており、次の活動に役立てられていた。

 最後に、教員間で活動に対する理解度に温度差が見られたことである。分科会が終了してから、人数分に足りないため配布されなかった配布資料をいただくことができた。そこには「自己評価の確認項目」というクライテリアが記載されており「成績評価」(成果達成度、プロセス達成度)、「能力評価」(企画・計画、実行力、対応力、改善力)、態度評価(責任性、積極性、協調性)が項目として挙げられていた。また、活動時にもちいた「調査・活用メモ用紙」「活動記録用紙」「年間計画」「活動報告」も添付されていた。活動評価をおこなうためのルブリックもあり、その項目には「記述内容」「構成」「インタビュー結果」「調査結果」「全体的なまとまり/論理的構成」が挙げられていた。ここまで丁寧な学習の手立てがありながら、ディスカッションのなかではこの内容についてはまったく触れられなかったのは、資料の作成者またはリーダーは教育内容に習熟しており、十分な理解をもってフォームを作成しているが、実施レベルの先生には伝わっておらず形骸化があったことが考えられる。理論をふまえたフォームがあることは重要であるが、それがどのように機能するかの検証は必要であると考えた。

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 というわけで、分科会に参加して、現場はまだまだ経験学習についての認識が十分になされていないことを知るとともに、JRC(日本赤十字)にはまた異なるボランティアのスキームがあるようであるという情報を得た。また機会があれば、その赤十字のスキームを調べてみたいと思う。おつかれさまでした。

篠原康正(2016)「イギリス」文部科学省編著『諸外国の教育動向2015年度版』明石書店

 以下、本書に基づいて、イギリスの教育制度について概要をまとめる。

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1.概観

2.教育政策・行財政

3.生涯学習

4.初等中等教育

5.高等教育

6.教員

資料15 イギリスの学校系統図

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 イギリスの義務教育は5~16歳の11年間である。初等教育は日本の幼稚園年長から小学校5年生までに匹敵する6年間でおこなわれる。中等教育は日本の小学6年生から高校1年生にあたる5年間である。義務教育終了後の日本の高等学校にあたる課程は「シックスフォーム」とよばれ、大学への進学準備となる教育が2年間施される。義務教育段階の入学には選抜試験は行われない。また、学区制もなく、生徒側が諸条件を加味して選択し、志願する。

 イギリスには、学校が卒業証書を出す仕組みはなく、通常、生徒は各教育段階が終わる最終年次に外部資格試験を受験する。初等教育の修了段階はレベル1(GCSE:General Certificate of Secondary Educationほか)、前期中等教育(義務教育)の修了段階はレベル2(GCSEほか)、シックスフォームの修了段階はレベル3(GCE・Aレベルほか)が該当する。GCSEの受験科目は多岐にわたり、多い場合には10科目程度になる。義務教育修了段階での受験科目は科目が3グループに分けられており、32科目が設定されている。一般的に必修科目に対応する科目を受験する。GCE・Aレベルも受験可能な科目は44科目が設置されている。科目は同じく3グループに分けられており、学校で履修した科目を受験するが、生徒は志望する大学の専攻に応じて3科目を受験することが多い。2015年にもっとも受験者数が多かったのは、数学、英語、生物とされている。

1.概観

 2015年の選挙による保守党単独政権の誕生を受け、首相にはキャメロン氏、教育大臣はサジド・ジャヴィド氏が就任した。

2.教育政策・行財政

 今後の政策の3本柱は、▽イギリスバカロレア」の普及、▽人格教育の振興、▽アカデミーとフリースクールの推進となっている。

 「イギリスバカロレア」とは、中等教育修了一般資格(GCSE:General Certificate of Secondary Education)の主要5科目で一定の成績を取ったものに付与される指標である。2010年に普通教育科目(academic subjects)を幅広く学ばせることを目的に導入された。義務教育の最終学年(第11学年)に50の設定科目のなかから、生徒の既習科目に応じて科目別に受験できる。

 「人格教育」とは、「イギリス的な価値」を学校教育で重視するよう促すものである。「イギリス的な価値」とは、教育省による「児童・生徒の精神的・道徳的・社会的及び文化的発達(SMSC:Spiritual, Moral, Social, Cultural )」に関するガイダンスによると「民主主義、法の支配、個人の自由、相互の尊重、異文化寛容」とされている。

 「アカデミー」とは、教育水準局(OFSTED)により教育困難校と見なされた学校を学校裁量の大きい教育機関として設置替えしたものであり、2014年時点で公費により維持される学校の2割を占める。中等学校に限ってみると、6割近くとなっている。主に公立学校などが地方当局のコントロールを離れて、政府(教育省)から直接補助金を受ける仕組みとなっている。経営母体はアカデミー・トラストであり、2014年時点で192が存在している。ひとつのトラストは複数の学校を運営しうる。

 「フリースクール」とは、親や教員、大学その他企業を含む様々な団体が設置主体となる新設の学校を指す。

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 以上から、イギリスの教育は学力の質保証をおこなう仕組みが発達していることを理解した。生徒は、学校に在籍していたから(卒業証書をもらったから)相当の学力があるはずであるとは見なされず、外部試験の利用によって能力を公的に示すことになる。課外活動を認証する制度が受け入れられていることも、この仕組みが背景にあることが考えられる。

 その一方で、この資料からは、中等教育段階でのカリキュラムの詳細を知ることができなかったのが残念である。その後、ウェブで個人サイトをめぐるうち、昨年秋に2017年度版が発行されていることを知った。残念。

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これも昨年10月の発行。読みたい‥。

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英国エディンバラ公国際アワード


 日本語の資料がないのでウェブサイトから概要をまとめる。

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▶問題の所在

本プログラムは子どもたちのライフ・ワークバランスを育成することを目的とする。

子どもの学びは学校外でもおこなわれるものであり、子どもたちは地域での経験をとおして市民性を身につける必要があるという考えにもとづいて設計された。

Not all learning happens in the classroom. Young people need experiences outside the classroom to become committed, responsible and fulfilled citizens of the world.

英国エディンバラ公国際アワード(DofE) は、14~24歳の若者の課外活動を認定する国際的な証書である。子どもたちは出自や能力、興味関心にかかわらず社会勉強をおこなっていく。他者との競争ではなく、現在の自分に対してチャレンジする活動によって自分の限界を克服し自己効力感を高めることを目標とする。

What is the Duke of Edinburgh's International Award?
The Duke of Edinburgh’s International Award is also known as DofE, The Head of State Award, The President's Award Scheme, The International Award for Young People, and the Governor General's Youth Award. The Award is available to all 14-24 year old and is the world’s leading youth achievement award. It equips young people for life regardless of their background, culture, physical ability, skills and interests. Doing the Award is a personal challenge and not a competition against others; it pushes young people to their personal limits and recognizes their achievements.

本プログラムは60余年にわたる歴史があり、多くの若者の変容に寄与してきた。ノンフォーマル教育において若者の能力開発に重要な役割を果たすものであり、その門戸は広く開かれてきた。

Since its launch over 60 years ago, the Award has inspired millions of young people to transform their lives. Through non formal education, the Award can play a critical role in a young person’s personal development and is achievable by any 14-24 year old who wants to take up the challenge.

創始者はドイツの教育学者クルト・ハーンで、1956年に開始された。

The Duke of Edinburgh's International Award was founded by HRH The Duke of Edinburgh KG, KT in 1956, in conjunction with Kurt Hahn, the German educationalist.

  本プログラムは4つのセクションで構成される。 各セクションはレベルが3段階(金・銀・銅)に分かれていて、認証を受けようとするものは全セクションを制覇しなければならない。特に金を取ろうとするものは滞在型プロジェクト活動までおこなう必要がある。

The Award is comprised of three levels and four sections. Participants complete all four sections at each level in order to achieve their Award. At Gold level, participants also complete a Residential Project.

以下、各セクションの説明を試みる。

1)ボランティア活動

参加者は一定期間(金・12か月、銀・6か月、銅・3か月)奉仕活動をおこなうことによって自らも成長する経験をする。

例)施設の慰問、スポーツ支援、慈善活動

Participants are required to give service (volunteer) over a set period of time that enables them to experience the benefits that their Voluntary Service provides to others.

2)スキル開発

スキル開発のセクションでも、一定の期間、スキルの向上を図ることによって達成感や満足感を得る。生活技術や職業スキルを進展させることによって就業能力を上げることもねらいにある。

例)楽器演奏、スポーツの審判、アート、DIY、文芸、室内遊戯

The Skills section provides the opportunity for a participant to either improve on an existing skill or to try something new. As with the other Sections of the Award, a level of commitment is required over time to progress a skill. It leads to a sense of achievement and well-being and possibly improved employability through the development of life and vocational skills.

3)運動

個人の健康増進を図ることはコミュニティに対しても福利が大きい。本セクションの目的は、参加者の健康状態を良好にすると同時に協働性、自己肯定感、自信を育成することにある。

Encouraging healthy behaviors has benefits, not only for participants but also for their communities, whether through improved health, or active participation in team activities. This Section specifically aims to improve the health, team skills, self-esteem and confidence of participants.

4)旅行

旅行は遠足でもかまわないが、チャレンジングな内容のものである必要がある。参加者は広いフィールドで自己肯定感、協働性、健康増進を図ることができる。また、大人の監督の下に安全が管理された状況で自分の殻を破る体験をすることになる。

The journey can be an exploration or an expedition but must be a challenge. The aim of this Section is to provide participants with the opportunity to learn more about the wider environment, as well as to develop their self-confidence, team work and health. Participants are taken out of their comfort zone but kept within a safe and secure setting, achieved through suitable training and supervision.

 5)滞在型プロジェクト活動

この活動では新しい仲間と意味のある体験を共有し、共通の目標を達成する。活動は子どもが自分で始めることが条件となる。その結果、子どもは新しい人と異なる環境でやり方を模索し、方法を身につける。成長できる経験ができることが望まれる。期間は4泊5日以上が想定されている。

Participants have the opportunity to share a purposeful experience with people who are not their usual companions and work towards a common goal, set out by the participants themselves. Through the Gold Residential Project participants will meet new people, explore life in an unfamiliar environment, develop new skills and, hopefully, have a life changing experience.

本プログラムは主に赤十字ボーイスカウト、YMCAなどと提携している。また、 Cambridge Pathway https://www.cambridgeinternational.org/about-us/what-we-do/ という国際的な大学入学資格の課外活動の単位認定にも用いられている。

Whilst partnerships vary from country to country, we also work with some organisations in a much more global context. Around the world, the Award works closely with, and is part of the ‘Big Six’ – six global youth volunteer and membership organisations, consisting of the International Federation of the Red Cross and Red Crescent Societies, the World Association of Girl Guides and Girl Scouts (WAGGGS), the World Organisation of the Scout Movement (WOSM), the Young Women’s Christian Association (YWCA), the Young Men’s Christian Association (YMCA) and The Duke of Edinburgh’s International Award.

また、就職にも優位に働くことが示されている。e

Find out how the award makes young people more employable

課外活動がいかに子どもの発達に重要かを示す記事もサイトに示されていた。
www.intaward.org

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 以上、サイトから内容をまとめた。ここから分かることは、学生時代に課外活動をおこなったことを認める資格であるということである。理念と目的、活動の枠組み、期間の指定はあるが、運用の方法は実施者にまかされている。日本ではボーイスカウトなどに指導者がいるようである(未確認)。

 また、60年余りの歴史があるということから、おそらくイギリスの教育制度の課外活動として特に機能するように発達してきたプログラムではないかと推測する。たとえば、運動セクションに関しては、日本でいうところの保健体育と活動内容が近似しているし、旅行に関しては日本の学校行事や修学旅行と似ている。だから、日本の「体験活動奨励制度」でどのような「体験(経験)」が期待されているのかを知るには、イギリスの教育制度を知る必要があると考える。

 というわけで、次はイギリスの教育制度についての基礎知識を仕入れてきたいのであるが‥今日はとても忙しくなる予定である。ピンポイントで適切な資料が瞬時に識別できるとよいのだが‥。それでは、また明日。アディオス。